本放送終了から遅れること3年。おかしなタイミングでラブライブ!サンシャイン!!にはまることになった緑虫ですが、どっぷり浸かることになった一番の原因はテレビアニメ版の視聴です。
ですが、テレビアニメ版を一度見ただけでは腑に落ちない部分がありました。
千歌ちゃんはスクールアイドルに憧れて活動を始めたのに、なぜこれほどまでに統廃合の阻止にこだわるようになったのか。
主人公である高海千歌は偶然µ'sのライブ映像を見ることにより、スクールアイドルの存在を知り、そして自分もµ'sのように輝きたいと思ったことからスクールアイドル部を結成します。スクールアイドルという輝かしい存在に憧れ、自分もそんな風になってみたいと思った。これが活動の動機になります。
ですが物語の中盤から終盤にかけ、浦の星女学園が統廃合の危機にあることから、千歌たちはスクールアイドルの活動を通して統廃合を阻止するべく奮闘します。ラブライブに出場し知名度を上げることで浦の星女学園への入学希望者を集めることが、活動継続の目的です。
この動機と継続の理由には、連続性がないように見えたのです。
そこで、私はもう一度アニメを見直してみることにしました。何か見落としてるのではないかと考えるのが妥当ですからね。
活動を続ける目的が変わっていく中で、千歌たちは何を考え、何を目標にしていたのか。作中のセリフとともにまとめてみようと思います。
※以下、自分の考えが多分に含まれるので、話半分で読んでください。そんなわけあるか!それは違う!というような意見があれば、コメントに残して頂けると幸いです。
1. 序盤の目標には具体性がなかった
1期1話~5話での千歌たちの考えをまとめると以下になります。
輝くとは:スクールアイドルとして努力して、何か大きな目標を達成すること
目標:µ’sのようになる(明確な達成目標なし)
まず、私が勘違いしていたことは、千歌ちゃんが言う輝くこと=目標達成という図式は、物語の最初から最後まで存在しなかったということです。千歌ちゃんは1期1話終盤、梨子ちゃんと一緒に海に落ちた後の場面でこう語っています。
あなたみたいにずっとピアノを頑張ってきたとか、大好きなことに夢中でのめりこんできたとか。将来こんな風になりたいって、夢があるとか、そんなの一つもなくて。
私ね、普通なの。
それでも何かあるんじゃないかって思ってたんだけど、気が付いたら高2になってた。
そんな時、出会ったの。あの人たちに。
みんな私たちと同じような、普通の高校生なのに、キラキラしてた。
スクールアイドルって、こんなにも……こんなにも、こんなにも、キラキラ輝けるんだって。
私も仲間と一緒に頑張ってみたい。この人たちが目指したところを、私も目指したい。
私も、輝きたいって。
千歌ちゃんは何をやっても平凡だった自分でも、努力すればµ'sのように輝けるかもしれないと、µ'sに対する憧れを語っています。µ'sのようになることが千歌ちゃんの夢であり、目標となったわけですが、ここではまだ何か大きなことを成し遂げてみたい、スクールアイドルをやってみたら何かが変わるかもしれないという漠然とした期待しか持っていません。それは1期2話で作詞をやろうとしていた千歌ちゃんのセリフや、1期3話の初ライブ後のセリフからもうかがえます。
頑張って努力して、力を合わせて、奇跡を起こしていく……私でも、できるんじゃないかって。今の私から、変われるんじゃないかって
彼女たちは言いました!
スクールアイドルは、これからも広がっていく!どこまでだって行ける!どんな夢だって叶えられると!
これは今までの、スクールアイドルの努力と、街の人たちの善意があっての成功ですわ。勘違いしないように!
わかっています。
でも、ただ見てるだけじゃ始まらないって。今しかない、瞬間だから……だから、輝きたい!
この時点で、スクールアイドルとして頑張れば奇跡を起こす、何か大きな成果を得られるという一連の流れを輝くと定義しているように思えます。ですが、具体的に何をやればいいか、何を達成するかは千歌ちゃんたちの中では決まっていません。µ’sのようになるという目標はありますが、それも何を達成すればµ’sのようになったと言えるかというものがありませんでした。よくある話ですが、憧れだけでスクールアイドルを始めてしまったので、ゴールが明確になってなかったわけです。
ところが、スクールアイドルの活動が軌道に乗っていくことにより、千歌ちゃんたちの目標が変わります。
2. 現実を突きつけられできた、スクールアイドルとしての小さな目標
1期6話~10話での千歌たちの考え方は以下の通りです。
輝くとは:スクールアイドルとして努力して、何か大きな目標を達成すること
目標:0を1にすること(廃校を阻止すること、自分たちを認めてもらうこと)
ここでもまだ、スクールアイドルとして努力して、何か大きな目標を達成することと、0を1にすることはリンクしていません。この辺りでは輝くことに対する言及がまだ少なく、考え方が初期と変わらずまだふんわりしていると考えられます。そんな中で、千歌ちゃん達には目標が2つ生まれました。
それが、廃校を阻止することと、自分たちを認めてもらうことです。
1期6話は浦の星女学園の統廃合の話が千歌ちゃんたちにも伝わる話ですが、その時の千歌ちゃんの反応は、なんとかきゃしなきゃ、行動しなきゃという気持ちより、お膳立てがやってきた!という嬉しさのほうが勝っていました。
廃校だよ!音ノ木坂と一緒だよ!
これで舞台が整ったよ。私たちが学校を救うの!あの、µ'sのように!
とにかく、廃校の危機が学校に迫っているとわかった以上、Aqoursは学校を救うため、行動します!
千歌はこう言った後、梨子ちゃんに行動って何するつもり?と聞かれますが、すぐに返答できないでいます。憧れのµ’sと同じシチュエーションになったことに喜んでいるだけで、この時点では何も考えていなかったことがわかりますが、内浦のPVを作っていく中で考えが少し変わっていきます。
でも、学校が無くなったらこういう毎日もなくなっちゃうんだよね。
無くなっちゃダメなんだって。私、この学校好きなんだ。
1期7話~8話、東京のイベントに招待され、持てる力を発揮した千歌ちゃんたちですが、結果は得票数0という結果になります。当初はみんなに落ち込んだ姿を見せたくない、私のわがままのためについてきてくれているみんなを悲しませたくない、と我慢していた千歌ちゃんですが、最終的に悔しいという自分の気持ちを吐露します。
私、まだ何も見えてないんだって、先にあるものが何なのか。このまま続けても、0なのか、それとも1になるのか、10になるのか。ここでやめたら全部わからないままだって
だから私は続けるよ、スクールアイドル。だってまだ0だもん。
あれだけみんなで練習して、みんなで歌を作って、衣装も作って、PVも作って。頑張って頑張って、みんなにいい歌聞いて欲しいって。スクールアイドルとして輝きたいって。
なのに0だったんだよ!悔しいじゃん!!
それに対して、梨子ちゃんはみんな千歌ちゃんのためにスクールアイドルをやっているのではなく、自分も同じ夢を見たいから一緒にやっているのだと答えます。
みんな一緒に歩こう、一緒に。今から、0を100にするのは無理だと思う、でも、もしかしたら1にすることはできるかも。
私も知りたいの。それができるか。
ここで直面したのは沼津という温かい地域から飛び出した先にあった、全国という壁があまりにも高かったということ。でもだからこそ、その壁を越えてみたい。その先にある景色を見てみたい。これこそが0を1にしたいという気持ちだと思います。自分がµ’sの歌を聴いてそうなったように、自分たちの歌を初めて聴いた人の心を少しでも動かせるようになりたい。自分たちを認めてもらいたいと思う気持ちです。
かくして、ラブライブに挑戦する明確な目標を得た千歌ちゃんたちは、ここでは割愛しますが3年生たちと合流し、ラブライブ予選に挑みます。
3. 無謀な目標設定へ
1期11話~13話にかけての千歌ちゃんたちの考えをまとめると以下になります。
輝くとは:みんなと一緒にスクールアイドルとして努力して、全力で目標達成に向かって挑むこと。その結果が、大きな結果(奇跡)を生み出すこと
目標:0を1にすること(廃校を阻止すること)
2つあった目標が、なぜ廃校阻止だけになったのか。それは、ラブライブ予選を突破したことで、その自分たちを認めてもらうという目標がおおむね達成されてしまったからです。最初から千歌ちゃんたちはラブライブ優勝を目指していたわけではありませんし、事実、1期12話では聖良さんにラブライブ、勝ちたいですか?と聞いたりもしています。予選突破により、一定の達成感を得ていたというわけです。
そこで彼女たちが気になったのはもう一つの目標だったもの、廃校阻止の問題です。1期12話で学校説明会の話が出てきますが、この辺りは補足がないので唐突に聞こえるだけで、裏では準備をしていたと考えるべきでしょう。3年生も合流したことで、廃校阻止という目標もしっかり考えられていたわけです。
ところがここでは入学希望者0人という、また0という数字を見せつけられる結果になります。そして生まれたのが、
・スクールアイドルとしての得票数0を1にできたのだから、入学希望者も0から1にしたいという願望
・µ’sじゃないから、東京じゃないから廃校阻止は無理と認めたくないという意地
です。スクールアイドルの人気と入学希望者数はイコールになることはないのに、µ’sという前例がある。努力した結果0を1にできたのだから、入学希望者数だってできるはず。夢をあきらめなければ、スクールアイドルにはそれだけの力があるはずなんだ。と考えたのでしょう。これを更に後押ししたのが、仲間と一緒に努力していくことによって少し変化した輝くことの定義です。
1期10話までと比べると、輝くことにまずみんなと一緒にという言葉が追加されていることがわかります。これは1期11話終盤、梨子ちゃんが単独でピアノコンクールに出場し、8人でライブをやる前の曜ちゃんと梨子ちゃんのセリフから伺えます。
千歌ちゃんにとって輝くということは、自分独りじゃなくて、誰かと手を取り合い、みんなと一緒に輝くってことなんだよね。
私や曜ちゃんや普通のみんなが集まって、独りじゃとても作れない、大きな輝きを作る。その輝きが、学校や聞いてる人に広がっていく、つながっていく。
それが、千歌ちゃんがやりたかったこと。スクールアイドルの中に見つけた、輝きなんだ。
このセリフは、8話終盤のやり取りから千歌ちゃんに芽生えた、苦楽を共にする仲間がいることの大切さです。今までは新生Aqoursの発起人として、勧誘して呼び寄せたメンバーばかりだったこともあり、どこか自分の夢に付き合わせているという後ろめたさが僅かながらにでもあったと考えられます。ですが、梨子ちゃんの言葉により、みんな自分に付き合ってくれていたのではなく、自らの意思で同じ目標に向かって進んでいたことがわかります。みんなが同じ目標に向かって一緒に進んでいく、そうすることで独りじゃできないこともできるようになり、さらに大きな力を生んでいく。これこそが、µ’sが奇跡を起こした要因の一つなのだと気付いたのです。
では、奇跡を起こしたµ’sと、未だ廃校を阻止できない自分たちとでは何が違うのか。その答えを探しに東京へ、そして音ノ木坂学園を訪れた千歌ちゃんたちはこう結論付けました。
多分、比べたらだめなんだよ。追いかけちゃダメなんだよ。µ'sも、ラブライブも、輝きも。
一番になりたいとか、誰かに勝ちたいとか、µ'sってそうじゃなかったんじゃないかな。
µ'sのすごいところって、きっと何もないところを、何もない場所を思いっきり走ったことだと思う。みんなの夢をかなえるために。
自由に、真っすぐに。だから飛べたんだ。µ'sみたいに輝くってことは、µ'sの背中を追いかけることじゃない。自由に走るってことなんじゃないかな。全身全霊、なんにもとらわれずに、自分たちの気持ちに従って!
私は……0を1にしたい。それが今、向かいたいところ。
自分の気持ちに従って、目標に向かってみんなで全力で取り組むこと。その結果が更に多くの人に波及して、大きな成果を生み出す。奇跡を起こす。そうすることが輝くということなんだと千歌ちゃんは考えました。
ですが、ここでの目標は0を1にすること、つまり廃校を阻止することになっていました。µ’sの背中を追いかけることが正じゃないとしつつも、その結果得られる成果としてはµ’sと同じものを追いかけてしまったわけです。
また、ここにきて輝くために必要な達成目標が廃校を阻止することとして合致してしまいます。つまり
・みんなと一緒にスクールアイドルとして努力して、全力で廃校阻止に向かって挑むこと
・その結果が、学校存続という結果を生み出すこと
この2つが輝くことの定義になってしまいました。
これにより廃校を阻止することで輝ける=廃校阻止に失敗すると輝けないという考えを生み出してしまうことになりました。2期のメンヘラみかんが生まれる条件は1期12話で既にできていたわけです。
以降、千歌ちゃんたちは輝くために廃校阻止に挑む、学校が存続するという成果を出すことが輝くことの一つという考えに捕らわれ続けることになってしまいました。これが、2期1話~7話につながる廃校阻止にこだわり続けた理由と、廃校阻止が不可能になった時点でラブライブに挑戦する意義を見失った理由と考えられます。
4. 結論
千歌ちゃんがスクールアイドルを始めたきっかけはµ’sへの憧れであり、輝きたいという願望でした。ですが、その輝くためにはどうすればいいのか、何を成し遂げたいのかということが曖昧で、答えを出せていないままスクールアイドルを始めています。そんな中、廃校という後から来た問題が、µ’sへの憧れと重なったことで、自分たちで解決できるはずの問題として軽い気持ちで取り上げます。その後、みんなで力を合わせて大きな目標を達成し、奇跡を起こそうとする過程や成果が輝きであると考えたため、残っていた大きな目標である廃校阻止を自分たちの至上命令として扱うことにしたのです。それこそが自分たちの輝きを見つけられるかもしれないからと。こうして9人は浦の星女学園を救うために、スクールアイドルとして活動することにした。こう考えると、1期と2期が綺麗につながるのではないでしょうか。
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